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月琴~つきのこと~

第4章 第二話 【月琴~つきのこと~】 二

 寄合の席で嘉平太を皮肉った男は四条の呉服問屋若狭屋の三男で、やはり兄の代わりに顔を出していた。父親が早くに亡くなり、母親に溺愛されて育ったせいか、二十一になるというのに甘ったれで酒色ばかりか賭け事にまで出を出すとんだ放蕩息子である。
 この極道息子が以前から小文に懸想していたのは有名な話であった。知り合いを通じて何度となく信濃屋にも聟入りの話が来ていたのだが、惣右衛門が承知するはずもない。

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