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月琴~つきのこと~

第4章 第二話 【月琴~つきのこと~】 二

 しかし、嘉平太にとって、妙乃は姉の代わりでさえなく、取るに足らない存在にすぎなかった。
「妙乃」
 静かな声音で呼びかけられ、妙乃は弾かれたように面を上げた。淡い闇に浮かび上がる良人の顔は、もういつもどおりの穏やかさを取り戻していた。そのことは怯えていた妙乃を少しだけ安堵させた。

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