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月琴~つきのこと~

第4章 第二話 【月琴~つきのこと~】 二

「妙乃はそれでもまだ出てゆくと言うのか!?」
 妙乃は淡い微笑を浮かべた。
「あなたが姉さまをそこまで想っていらっしゃるのですもの。私のいる場所はありません」
 嘉平太は吐息混じりに首を振った。
「正直申せば、すべて忘れたとは言えない。だからこそ、この半年間、妙乃を抱かなかった。義姉(ねえ)さんを想いながら妙乃を抱くのは、男としてあまりに卑怯だと思った」
 その言葉は妙乃にとっては酷(むご)いものだった。

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