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月琴~つきのこと~

第1章 第一話【宵の月】 一

 小文は泣きながら治助の懐に飛び込んだ。
 刹那、治助は驚愕したようだったが、その手をおずおずと小文の背に回した。
「お嬢さまを見ていると、村に残してきた妹を思い出しますよ。俺に似ず、器量良しの奴で、村の若い者と所帯を持って、子にも恵まれました。貧しいけれど、幸せにやってくれてます」
「妹―、私はあなたにとって、妹のようにしか見えないの」

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