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月琴~つきのこと~

第2章 第一話【宵の月】 二

「お前さま、お願いですから、もう止めて下さい。今更この子を殴ったからといって、何も事態は変わりません。お願いですから」
 母は父の着物の裾に取り縋って泣いていた。惣右衛門の振り上げた手が行き場を失い、力なく降ろされた。仁王立ちになった惣右衛門の眼に光るものが見えた。

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