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空の記憶~あなたと私と彼、それから~

第5章 第二話 【めざめ】 旅立ち

~旅立ち~

 耳を澄ませば、潮騒のざわめきがかすかに聞こえる。幸(ゆき)は亮平の使う網を丁寧にひろげ、陽の当たる場所に板を置いて立てかけるようにして干した。背筋を伸ばして思いきり深呼吸すると、潮の香りをたっぷりと含んだ空気が流れ込んでくる。海風が幸のわずかにほつれた髪を揺らし、通りすぎてゆく。漁師の女房となって半年、最近では大分新しい生活にも馴染んできた。

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