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空の記憶~あなたと私と彼、それから~

第5章 第二話 【めざめ】 旅立ち

「当然のことだろう。幸ちゃん、結婚前の娘が男と同棲するなんて、およそ常識では考えられないことだ。良識ある家庭で育った君がそんなことをするなんて僕には今でも信じられない」
 幸は唇を噛みしめた。これまで進一郎は話の判る男だと思っていた。つまらない常識とかに縛られた頑固なだけの大人とは違うと思っていた。だが、どうやら、それは幸の思い違いであったようだ。進一郎もやはり、旧弊な考えに凝り固まった他の華族の連中と大差はなかったのだ。

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