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　最寄りの駅から三時間余りで到着するそこは、かつて幸が学生生活を送った想い出の場所でもある。亮平の家を出たからといって、他にゆく当てもなかったけれど、思いついたのが以前暮らしたことのあるこの都市だったのだ。
　また、大都市の方が見知った人に逢う可能性も少ない。通っていた女学校や寄宿舎があるとはいえ、これだけ大勢の人が住んでいれば、幸のような娘一人が紛れ込んでしまえば、見つかる可能性はまずないと思えた。