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空の記憶~あなたと私と彼、それから~

第7章 第二話 【めざめ】 別離  

 浩三とよく立ち寄るカフェの近く、ガス灯の前に人影を見つけた。上背のある、若い男のようだ。近頃では珍しくもなくなった洋装に、鳥打ち帽を目深に被っていた。
 男が顔を上げた刹那、幸は背筋に氷塊を入れたような想いになった。
「幸、久しぶりだな」
 深い声―、かつて、幸はこの声が好きだった。この声の持ち主である男を愛していた。

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