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空の記憶~あなたと私と彼、それから~

第9章 第三話【波の音】 絶望の果て

 今はまだ、紫陽花はほんのりと淡く色づいたままである。降りしきる雨の音に包まれながら、幸は泣きやんだ自分の心が存外に軽くなっていることに気づいた。もとより、心ならずも浩三を裏切ってしまった罪が消えてなくなるわけでもなく、状況は何一つ変わらない。それでも。

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