空の記憶~あなたと私と彼、それから~
第10章 第三話【波の音】 衝撃の真実
考えている中に、幸の脳裡にふと幼き子らの面影が浮かんだ。四歳の幸太郎、まだ乳飲み子の浩。二人ともかけがえのなき我が血を分け与えし子らであった。まだまだ母が恋しい年頃で、毎日、どのように過ごしているだろうかと考える度に、涙が込み上げてくる。 今の亮平に対する気持ちは、例えて言うなら、子どもたちに対する想いに似ている。かけがえのない大切な存在、家族に対して持つ親愛の情に近いものだ。それは、けして一人の異性への思慕ではなかった。