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空の記憶~あなたと私と彼、それから~

第10章 第三話【波の音】 衝撃の真実

「大丈夫よ、ずっと側にいるから」
 幸は優しく微笑んで、亮平を抱きしめた。子どもにするように、その背を優しく叩く。このひと月で、亮平は更に痩せてしまったと、幸は哀しくその骨張った身体を抱いた。かつての逞しい海の男の面影は既にない。漁に出ることもここ数日はなくなってしまった。
 亮平の病は亮平の身体の内から徐々に彼を蝕み、今や亮平の生命まで喰らい尽くそうとしていた。身体が中から腐り、朽ち果ててゆく怖ろしい病だそうだ、と、あの医者が来た日、亮平自らが幸に語った。

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