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空の記憶~あなたと私と彼、それから~

第11章 第四話【縁~えにし~】 早春賦

 岩田幸が村の小学校で教員として働き始めて、はや二年が経過していた。今日は既に一日の授業は終わっているが、数人しかいない生徒たちは皆居残っている。幸は教室でオルガンを弾き、その回りを子どもたちが取り巻いていた。
「さくら、さくら~」
 今のこの季節、膨らみかけた桜の蕾も一挙に開いてしまうのではないかというほど、愛らしい歌声が狭い教室中に響く。

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