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空の記憶~あなたと私と彼、それから~

第11章 第四話【縁~えにし~】 早春賦

「―」
 その人の顔を見た瞬間、自分の側を流れる刻が止まった。懐かしさが一挙に溢れ出し、熱いものが込み上げてきた。もう二度と逢えない、逢わないと固く決めていたのに、決意は脆くも崩れ去り、思わず駆け寄りたい衝動を辛うじて押さえた。
「幸―」
 幸の良人浩三は以前と変わらない穏やかな眼差しで幸を見つめていた。その瞳には、軽蔑も怒りもなく、静かに凪いでいた。

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