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空の記憶~あなたと私と彼、それから~

第11章 第四話【縁~えにし~】 早春賦

「自分の脚でしっかりと歩いているんだね、幸は」
 浩三の口調には嫌味も皮肉もなく、ただ静かに幸の心に入り込んできた。幸が前夫の瀬田亮平に突然連れ去られたのは二年前のことだった。亮平の許から逃げようと思えば逃げる機会はいくらでもあった。だが、幸は逃げなかった。

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