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空の記憶~あなたと私と彼、それから~

第11章 第四話【縁~えにし~】 早春賦

「また来るよ。幸が戻ってきてくれるまで、僕は何度でもここに来るから」
 浩三の声と共に、砂を踏みしめる音が次第に遠ざかってゆく。追いかけて背後から思い切り抱きしめたい想いに耐え、幸はその場に立ちつくしていた。
 海は波の白い繊細なレース模様を描く。それまで蹲っていたくろがふいに走り出し、砂浜を駆け回る。浩三が去って、安堵したのだろう。彼は彼なりに幸を守ろうとしていたに相違なかった。

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