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空の記憶~あなたと私と彼、それから~

第11章 第四話【縁~えにし~】 早春賦

 幸太郎はアイスクリームの山を銀のスプーンで崩しては、ひと口ひと口ゆっくりと口に入れる。そんな幸太郎を微笑ましく眺めながら、幸は訊ねた。
「学校では何のお勉強が好き?」
 と、幸太郎が弾かれたように顔を上げた。
「算術」
 口の回りに溶けたアイスクリームをいっぱいにつけて応える。
「そうなの」
 幸は笑いながら頷き、袂からハンカチを出して幸太郎の口回りを拭いてやった。

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