空の記憶~あなたと私と彼、それから~
第3章 第一話【空の記憶】~邂逅~
百合の花をこよなく愛し、また、彼(か)の花のように美しく匂いやかであった妻。妻が逝って、もう一年が経つ。毎月、彼は妻の亡くなった日には必ず花を持ってここへ来る。
しばらく浜辺に立ち尽くしていた男は漸く歩き始めた。ふと前方に何かが打ち上げられているのを見、男はわずかに眼を見開いた。昨日は一日中ひどい時化(しけ)で、海はいつになく激しい風雨に荒れ狂った。昔から、ここら界隈の海は内海でもあり、穏やかなことで知られている。あんな風にまるで海の神が怒り狂ったように荒れることなど殆どないのだ。
しばらく浜辺に立ち尽くしていた男は漸く歩き始めた。ふと前方に何かが打ち上げられているのを見、男はわずかに眼を見開いた。昨日は一日中ひどい時化(しけ)で、海はいつになく激しい風雨に荒れ狂った。昔から、ここら界隈の海は内海でもあり、穏やかなことで知られている。あんな風にまるで海の神が怒り狂ったように荒れることなど殆どないのだ。