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空の記憶~あなたと私と彼、それから~

第15章 番外編第一話【潮騒の詩】 月夜の契り

「おい、止せ。澪―」
 亮平は眩暈(めまい)がしそうだった。ふわりとした花のような香りが漂う澪の身体は、年頃の娘らしくやわらかい。亮平は、ためらいがちにその華奢な身体に腕を回す。澪が亮平の広い胸に頬を押し当てた。その刹那、ひときわ強く芳しい花の香りが鼻腔をくすぐる。
 亮平は澪の髪に触れた。数日前にも髪飾り代わりに挿していた百合の花が眼前にある。
澪から匂ってくるかすかな芳香の原因はどうやら、この白百合の花のようであった。

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