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　失った友のことを思い出しながら歩いていた時、ふいに前方の何かにぶつかった。大きな衝撃に愕いて立ち止まると、どうやら織部の絵を見ていた誰かの背に衝突したらしい。
「ご、ごめんなさい」
　弥生が狼狽えて叫ぶと、相手も慌てているらしいのが判った。見たところ、二十歳ほどの若い男である。紺絣に紺の袴と書生のような恰好だが、頭に被った角帽には見覚えがある。女学校の近くにある美術学校の制帽だ。