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空の記憶~あなたと私と彼、それから~

第17章 番外編第二話【薔薇ものがたり】~或る画家の絵~

 その日、伊右衛門の顔がいつになく冴えないことに気づき、弥生は気になった。カフェで顔を見たときから、何となく心ここにあらずといった体であったが、下宿に戻っても茫然としており、弥生が話しかけても聞いているのかいなかのか、まるで上の空だ。いつもなら、どんな他愛ない話でもちゃんと弥生の言葉には耳を傾けてくれるのにと、弥生は訝んだ。

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