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空の記憶~あなたと私と彼、それから~

第2章 第一話【空の記憶】~運命の嵐~

―あなたは筆無精だから、なかなか手紙を書かないけれど、お父さまがいつもご心配ばかりしています。たまにで良いのだから、手紙を書くのですよ。
 きっと、母は、そう言いたかったに相違ない。
 幸は、そっと小さな吐息を洩らした。幸の父は小さな町では名士と呼ばれる立場にあり、男爵という地位も持っていた。明治のご一新前は、玄武の国の藩主の縁戚として、小さいながらも領地を賜っていた、れきとした武士の家柄である。

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