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空の記憶~あなたと私と彼、それから~

第19章 番外編第三話【秘恋~背徳の恋~】 濁世の花

「いいえ、このようななりをしておりましても、私は煩悩多き身でございます。あなたさまの申されますように、いっそのこと鳥や花のように無心に生きることができれば良いのですが」
 光円は、ふっくらとした頬にやわらかな微笑を浮かべた。それは、まさしく、濁世にひっそりと咲く一輪の花のようであった。
 織部はまた光円に眩しげな一瞥をくれると、黙り込んだ。睡蓮の池のほとりを初夏の風が通り過ぎてゆく。二人はその後も長い間、そうやって池を眺め続けていた。

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