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空の記憶~あなたと私と彼、それから~

第20章 番外編第三話【秘恋~背徳の恋~】 睡蓮の池 

 数日が過ぎた。その日は朝から雨が降っていた。襖絵はほぼ完成に近いところまで出来上がっていた。織部は絵について少し考えたいことがあると言い置いて、宿泊している部屋に朝から籠もりきりでいた。
 光円は久しぶりに自室に座り、開け放した障子の向こう側、雨に打たれる紫陽花を見ていた。この夏はいつもの年よりはやや雨が少ないようだが、それでも紫陽花は少しずつ色を深めている。織部が来たその日は白かった花びらも幾分淡い紫に染まりつつあった。

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