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空の記憶~あなたと私と彼、それから~

第20章 番外編第三話【秘恋~背徳の恋~】 睡蓮の池 

 あまりにも見事な襖絵であった。光円が襖絵の前で茫然と佇んでいると、後ろからとくが静かな声で言った。
「この観音さまは、どことなく庵主さまに似ておられますな。それにしても、すばらしいものでございます。あの方はいずれ名のある絵師となられましょう」
 とくの声は少し嗄れ声気味で、特徴がある。その言葉は紫陽花を濡らす降りしきる雨のように、光円の心の奥深くまで滲みこんできた。

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