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近くて遠い

第11章 歪み

向日葵が咲く季節になった。


悠月に持っていったら喜ぶだろうか。



光瑠は初めて自分で花を買って病院に向かった。



太陽に向かって

健気に背を伸ばす向日葵。

─────笑っていた方が楽しいじゃない?ね?



悠月の言葉と向日葵を胸に抱いて、光瑠はいつものように病室に入った。


そのときにみた


白衣を来た医者と


看護師の無念そうな顔を



光瑠は今でも鮮明に覚えている。



パサッ─…


力強く太陽に向かって咲いていた向日葵が

光瑠の腕から落ちていった。



また逝ってしまった──…


悠月の最期の顔は


やはり優しく笑っていた。



愛する人が


次々に去っていく。



─────光瑠、大丈夫。私がいるでしょ?



「嘘をつくな」






地位と金


望んでいないものだけが、

若い光瑠に残った。


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