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近くて遠い

第12章 善人か悪人か

「遅いな」


「あっ、有川様!?」


扉を開けると美しい人がたたずんでいるのが目に入って、思わず萎縮した。


お酒を片手に無表情でこちらをじっと眺めている。



「何の用ですかっ!」



強気で声を出す私にじりじりと有川様が近付く。



「俺の家だ。どこで何をしていようと俺の勝手だ」

「っ……」



ドアに追いやられるとフワリとお酒の匂いが漂う。


相当飲んだのか、いつもより顔付きが艶かしい…



有川様はグラスの中に入ったお酒を一気に口に含むと、グラスを脇のテーブルに置き、私の唇をいつものように乱暴に奪った。



「んっっ…」



コクコクと、口の中で生温くなったお酒が注がれる。

一気に広がるアルコールの味。



ツー……と首筋に垂れる水滴が身体をくすぐった。



「何故そんなに反発するっ…」


無理矢理飲まされたお酒に喉がじんわりと熱くなった。


「はぁ…あり…かわさま…やめて…」



抵抗虚しく有川様は羽織っていたバスローブを無理矢理にひんむく。

身体を隠すには頼りない薄いワンピース……



「お前のっ…お前の考えてる事が分からないっ…」


「いたいっ…」




有川様は叫びながら私を大きなベッドに投げ付けた。



この人本当に何なの…?


考えてることが分からないって…

私の台詞なんだけどっ…


振り返ろうとしたその瞬間腰にズシッと重みを感じた。


「ひゃぁっ」


跨がれ、背後から耳を舐められる。



「絶対に服従させてやる」



耳元から広がるその声に身体がゾワりと粟立つ…



「服従だなんてっ…きゃっ」



有川様の手が、私の胸を掴んだ。


薄い生地を通して有川様の熱が伝わる。


「買われたということの意味が…お前はよく分かっていないようだな」


「なっ……あっ…やめっ…んっ…」


クルリと身体を回転させられ仰向けになると、



少し上気した有川様の顔が近付いてまた乱暴にキスをしてきた。


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