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近くて遠い

第19章 運命

───────…

2ヶ月前…


「要様、有川様からお電話が…今すぐ会社に来るように…と。」



「今から…?」


執事の斎藤の言葉に部屋でまどろんでいた要が答えた。


「またやり残しか…」


「車を回してきますのでお急ぎ下さい!」


そう慌ただしく斎藤がいうのに返事をすると、要は先ほど脱いだばかりのスーツを着た。


夜遅くの社長からの呼び出しは珍しいことではなかった。


ふぅ…と溜め息をつくと、要は部屋を出た。



「雨が降りそうですねぇ」

「それはめんどくさいな…」


運転席で呟いた斎藤に言葉を返すと、要はジッと外の様子を見た。


会社までは15分程度、眠るにしては少し短い…


街の灯りも消え出して、往来する人の数も少ない。



つまらない…


髪をかきあげながら、要は淡々と過ぎていく時間に再び溜め息が洩れる。


窓のガラスに
シュッ…シュッ…
と水滴の跡がついた。



雨だ…




斎藤の言った通り、雨は振り出すと瞬く間に勢いが増した。



「お前の言った通りだな」

少し笑って要が前の運命席に座る斎藤に言った。



「随分激しいですねー」


といいながら、信号でブレーキをひく。



要は何の気になしに、ドアの部分に肘を乗せた。



ヴィーーン……


「おぅっと!」


その弾みで押してしまった開閉ボタンに窓が下がって雨が車内に入り込んだ。



「何やってるんですか!」

「いや、肘を乗せたらボタンが…」



そしてボタンを再び押して、窓を閉めようとしたとき、一人の少女が目に入った。



幻想的で


何かの映画のシーンを見ているような……




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