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近くて遠い

第21章 近くて遠い

「ここでもない……じゃあ…

ここだっ!!」



「わぁっ!見つかっちゃったぁああ。」



そう言って隼人は子どもらしくケラケラ笑うと、私から逃げようと来た道を走っていく。



えっ!?


「ちょっ、隼人っ!?」



必死になって追い掛けようとすると、隼人がクルリと振り返った。



「やっぱり鬼ごっこに変える!!お姉ちゃん鬼ねー!スタートっ!」


見つかるやいなや、すぐに遊びを変えて元気いっぱいに走り出す隼人。



「えぇっ!待ってよー!」


すばしっこい動き。



日の光を浴びてすくすく育っていく弟の姿は

見ているだけでとても幸せだった。



あんまり早く追い掛けちゃ、すぐ追い付いちゃうな…


そんなことを思いながらも、手加減していることがバレない程度に遠ざかっていく隼人を追い掛けた。



「こっちだよぉー!」



ニコニコしながら、息を切らせて隼人が後ろ向きに走る。


危ないよ!


そう声を掛けようとした時、案の定隼人は後ろによろめいて、

あぁ!


と声を出しながらハデにしりもちをついた。



ほらやっぱり…



「痛いよぉ~!!」


と大袈裟にリアクションをする隼人。


「もぉ…」



私はそんな様子を見て軽く微笑むと、小走りで隼人の元に向かった。


「どうした、転んだのか?」



ふと


後ろの茂みから、

柔らかな空気を纏った人が現れた。


「………?」



その声に、隼人が後ろを振り向く。



「怪我でもしたか?ん?」


そう言いながら、

下に伸ばした手をあちらこちらと手探りするように動かす。



要さん………




隼人は、その手をギュッと掴んで立ち上がった。



「………転んだの…」



「そうか…痛いか?血は出てない?」



要さんは、

優しく微笑みながら、隼人の頭にゆっくり手をおいて撫でた。



「大丈夫…」



視線の合わない要さんを不思議にそうに見上げながら隼人が言った。

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