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近くて遠い

第3章 父の残したもの

中々用件を言おうとしない男を私はジッと睨み付けると、男は、おぉこわっと言っておどけて見せた。



「うーん、簡単にいうとねぇ、お金、返してほしいんだよね~」



「お金……?」



「そうお金。」



男はそういうと、ニコッと笑った。



ゾワリと寒気がするほど嫌な笑顔。



「何のお金ですか。」




「いやぁ…だからねぇ?君のお父さん僕たちにたぁあくさんお金借りてるのに全然返してくれないどころか行方まで眩ましちゃってねぇ…
困ってるんだよぉ。」




お金を貸してる……?



そんなまさか、お父さんの借金、まだあるの……?




割れた卵がパックから染み出して、手をついている私のところまで広がってきた。



「いくらですか……」


「ん~加山、いくらだったけねぇ」


男はわざとらしく後ろに控える男に尋ねた。


「ざっとみて三千万ですね。」


加山と呼ばれた男が答えた時には、
私の手は卵でぐちゃぐちゃに汚れていた。



「さっ…三……千…万」



やっと輝きだしたと思った未来が、また一気に幕を下ろされたように暗くなった。


三千万なんか…

返せるわけない……



あまりの衝撃の金額に私は言葉を失って固まった。


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