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近くて遠い

第24章 究極の選択

─────────…


なんだ…


夢か…



私はホッと胸を撫で下ろして、ベッドから起き上がった。



怖かった…



「随分唸されてたな。
地震が怖いのか?」



扉を開けた光瑠さんが戻ってきて、私の傍に座った。


「地震は…怖いですけど…」

それよりも、

何もなかった

誰もいなかった

あの恐怖が

再び私を襲う。



「変な夢でも見たか?」


光瑠さんはそう言って私の顔を覗きこんだ。



コクンと首を縦に振ると、そうか、と言ってその大きな手で私の頭を撫でた。


「夢を見るってことは眠りが浅い証拠だ。」


光瑠さんはそういって、
少し困った顔をしていた。


どうしてそんな顔をするのか、分からなかったけど、起きたら光瑠さんがいたことが嬉しくて、私は光瑠さんの白いジャケットの裾を掴んだ。


「……もう行くんですよね?」



カーテンから洩れた光が、ベッド上に一筋の道を作っていた。


「あぁ。3日後にパリだからな。」



3日後…



そしたら、光瑠さんと一週間会えない…


「今夜も遅いですか?」


私は顔を上げて、光瑠さんの目をじっと見つめた。



「……そうだな」



分かってた答えがまんま返って来る。




「真希…そろそろ…」



時計を見て光瑠さんが小さく呟いた。



困らせてる──


「……すみません。」



私はそういって、ゆっくり光瑠さんのジャケットを掴んでいた手を離した。



「別に謝る必要はない。」


光瑠さんはそういうと、顎を掴んでうつ向いた私の顔を上げると、
触れるだけの優しいキスを私の唇に落とした。



「寝たりないなら寝ろ。
余震があるかもしれないから扉は開けとけ。」



「……はい。」


私の返事を聞いて、立ち上がった光瑠さんの後に続いて私も立ち上がると、
出口まで見送ろうと近くにあったバスローブを羽織った。


扉に向かって歩き出すと、ふと棚の上の小さな箱が目に入った。






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