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近くて遠い

第26章 糸の綻び

「真希さんっ!」


俯いて歩いていると、前から声が聞こえた。



「要さん……」


「関根様…」



ふと顔を上げると、隼人に手を引かれた要さんがいた。



「突然行ってしまわれたので何かあったのかと…
大丈夫ですかっ?」



やっとひいた涙がまた溢れてしまいそうになった。



「お姉ちゃんっ!」


そして隼人の存在に気付いて、泣いてはいけないとグッと堪える。



「……大丈夫です。すみません、何も言わずに。」



隼人にも、ごめんね、と言って頭を撫でた。


「………君。」



しばらく沈黙が続いた後、要さんが口を開いた。



「は、はい、わたくしでしょうか?」


愛花ちゃんが応える。


「そうだ。申し訳ないけど、隼人を部屋に連れて行ってくれるか?」


「え?」


要さんの言葉に愛花ちゃんが声を上げ、私も要さんを見つめた。


「えーどうしてー?」



「ちょっとお姉さんと話がしたいんだ。部屋でお利口に待っててくれるか?」


話……?

今、そんな余裕私には…


「ん~、分かった!」


隼人は要さんの優しい問い掛けに少し不満そうにしながら頷いた。


「で、ですが、関根様…」

「頼むよ。」


私の事を心配したのか、それを止めようとした愛花ちゃんの言葉を要さんが遮った。



「真希さん、よろしいですか。」



ずっと黙っていた私に要さんが強めの声で問い掛ける。



「…はい……」


そして私は勢いに飲まれて軽く返事をしてしまった。

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