近くて遠い
第31章 空虚な生活
あの時、
元の場所に戻って、父とやり直すと要さんに伝えたら、要さんはしばらく考えたあと、ギュッと私の手を握った。
『しばらくしたら、必ずあなたに会いに行く…。
だから待っていて欲しい…。』
何かを決意したような、そんな力強い言葉だった。
私は訳も分からぬまま、ただ、はいと返事をしたのだ。
それから、
今まで、要さんとは会っていない。
どこで何をしているのか…。
本当に会いに来てくれるのか…。
日に日に不安を募らせながら、私は毎日を送っている。
「……食べないのか?」
心配したようにお父さんが声を掛ける。
「あんまり、食欲なくて…」
私はそういいながら、お父さんに自分の茶碗を渡した。
「ずるいー!僕も食べたい!」
黙々と一人で食べていた隼人がそう言うと、お父さんは笑って、半分ご飯を隼人の茶碗に入れた。
普通の食卓。
お父さんは、
新しく仕事に就いたようで、食べる物に困ることはなくなった。
だけど決して裕福ではない。
私は日中スーパーのレジ打ちをして家計を助けている。