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近くて遠い

第32章 祭り

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ひかる



ただその三文字を聞いただけで

胸が苦しくて、動けなくなってしまった。



もう忘れたい。



なのに、
そういう時に限って思い出すのは横柄な光瑠さんじゃなくて

優しく私を見つめた光瑠さんだった。



「真希さん…」



その優しく甘い声に私はハッとして顔をあげた。



「す、すみません…」



少し先にいた要さんに小走りで近付いた。



「隼人…」



ガヤガヤとうるさい神社の中でも要さんの声はよく聞こえる。



身体の奥底に染み渡るような低い声とはまた違った…


温かみのある甘い声……




「この前


俺にまつぼっくりくれただろ。



俺まだそれ大事に持ってるからさ。



スーパーボールは……



他の5人にあげてくれ。」




その言葉に、
私は目を見開いて要さんを見上げた。



だけど、要さんは真っ直ぐ前を見たままだった。




「うーーん、わかったぁ!」



納得した隼人は機嫌よく笑うと、綿あめ屋さんを見つけて食べたいとせがんだ。




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