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近くて遠い

第32章 祭り

その言葉に要さんが黙った。



沈黙が続いたまま
どんどん家に近付いていく。

そしてそれは、
別れが近付いていることも意味する。



「……僕もね、正直戸惑っているんです。」



ようやく話し始めた要さんの言葉を私は顔を上げて聞いていた。



「あなたが…
あの日の少女だなんて思いもよらずに接していた期間が長すぎて…」



気付いていたのに
私は黙っていた…



「ごめんなさい…」


その罪悪感が今もなお私に押し寄せる。



「………謝らないでください」



その言葉に胸が締め付けられる。



「……あなたが素の僕が良いのならそうしますよ?」


「え?それってどういうことですか?」



首を傾げる私に
う~んと唸りながら、要さんが天を仰ぐ。



「敬語をやめる…とかってことですかね。」



「ふっ…それが敬語じゃないですか」



「あ…」



ほんとだ───



と言いながら、要さんと私は一緒に笑った。



「難しいなぁ
気を付けま…
いや、気を付けるよ。」


出会った時の口調になった要さんにドキッ──と胸が鳴る。



「あとは……


名前を呼び捨てにするとか…」



「え?」



丁度、家の前に着いて私と要さんは足を止めた。


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