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近くて遠い

第32章 祭り

「そんな当たり前の事を言わないでください。


俺は
もう君を離すつもりはない──


これからはずっと一緒だ…」



『僕』だった一人称が『俺』に変わって


甘く囁かれた言葉に


心臓が飛び出そうになる。


「ん……」



優しく塞がれた唇。


確かに、要さんが言っていたようにほんのり甘い味がする──



要さんは、
私に触れるだけのキスをすると、



ゆっくり顔を離して隼人を見つめた。



「よかった、起きてない」


ニコッと要さんが至近距離で微笑む。



私、ここで倒れちゃうかもしれない……


それくらい

私には甘すぎる時間だった。



ぐったりと脱力した隼人を引き取ると、

私と要さんは次の約束をした。



「ちゃんと隼人も喜びそうな場所を選びますから。」


「ありがとうございます…」



幸せが溢れる。



望んでいた、幸せ──



じゃあ、と言って手を上げる要さんに私も手を振りたかったが隼人を抱えていてそれが出来ないまま、

ただじっとその姿を見つめてた。



さっき触れた唇がまだ熱い…



私は顔を紅くしながら、要さんが見えなくなるまでずっと家の前で立っていた。



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