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近くて遠い
第36章 目覚め
「し、失礼しますっ…
小包が届きました」
ベッドに腰掛けていると、か弱い声がした。
小包……?
「開けろ」
顔も見ず、ただ面倒だと思いながら、光瑠は命令した。
昼か夜かも分からない。
空きっ腹にただただ酒を流し込む。
小包を開くその音さえも
光瑠の気に障ってイライラが募る。
「っ……」
「何だったのか早く言え。」
何も言わないまま黙したメイドに光瑠はまた顔も見ずに言い放した。
「………ネックレスが…」
その言葉に光瑠は眼を見開いて立ち上がると、
メイドの元によって小包を乱暴に奪った。
「あっ…!」
反動でメイドが床に転んだのにも無視してそのネックレスを見た。
金色のプレートのチャーム
小さな宝石の横には…
"Maki"
の文字────
「っ…!!!」
どれがいいかと
どれなら喜ぶかと
ただそれだけを考えて
パリの街を歩いたあの日々。
ふっ…
と光瑠は笑みを洩らした。
その笑いに愛花が床に転んだまま身を震わせる。
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