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近くて遠い

第8章 助けと契約

「すっかりキャバ嬢だねぇ?板についてるよぉ。
で、どうだい?お金はたまったかい?」



そう言いながら私の膝をゆっくりと撫でる。



「っ………」




触らないで!!


今すぐそう叫んでこの場から逃げ出したかった。



「もうちょっとだけ…待ってください…」



ふーん

と原田は言いながら、渡したグラスを持って品なく飲んでいく。



「おじょーちゃんも飲みな?ほら。」



グラスを差し出す。



「あっ…え…」



"勧められたら無理のない範囲で飲むこと"


それがこの店の決まり。



だけど、私はまだお酒を口にしたことがなかった。


それはまだ接客新人だったことと
唯一のゲストの有川様は、一人でひたすら飲むだけで私に勧めることはなかったからだった。



「どうしたぁ?
飲めないの?ほら?」



私が未成年なのも

断れないのも知っていてわざと原田は勧めているんだ…


「……いただきます…」




私は意を決してグラスを受けとると、半分ほど残っていたお酒を一気に飲み干した。



「いいねぇ、いい飲みっぷりだぁ」


膝をひさすら撫でる原田。


嫌だ…


はなして……

気持ち悪い……



そんな事思えなくなるくらい私は酔ってしまいたかった。



飲みな?

と言われるがままにお酒を身体に流し込む。



初めて感じる内側から沸き上がる熱。


身体すべてに血がドクドクと波を打って注がれる。



「なぁ"桜子"ちゃん?」




慣れてしまった夜の名をわざとらしく耳元で囁く原田。



アルコールで敏感になった身体のせいでさらにその声が不快に感じる。




「は…い…」




弱々しく声を出した私にニヤニヤしながら原田が近付く。




「君本当にかわいいねぇ」



ドレスで大胆に開かれた首元に、原田の指が這う。


「…っ、やめてください!」


意味のない抵抗に原田と加山が笑った。

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