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詩集

第19章 托卵

ラブホテルかと思うくらいに豪華な装飾の

病院の一室で彼を待つ

これは医療行為としての性交渉

見ず知らずの女性の卵子を子宮に入れて

見ず知らずの男性の精子を射精してもらう

正当で立派な生殖医療

よりホンモノに近い人工授精

愛する人とするように

本気の恋を演出する

「失礼します」

看護師が彼を連れてきた

うつむきがちに地面を見ながら

「シュウ様をお連れしました」

と、産婦人科医に報告をする

彼女の後ろには手術着のような、バスローブのような格好をした男性が立っていた。

そして、そそくさと、誰とも目をあわせないように部屋を出る

「はじめまして、シュウさん。

今回の施術を担当する担当医のコトミです」

若い、20代後半の彼に向かって、コトミは入室を促す

「のどかです。

よろしく」

私も続いて、コトミの後ろから声をかける

「シュ、シュウです。

よろしく…」

微妙な空気が室内に流れる

ここではよくあること

「では、さっそく施術に入ります、まずこちらのソファーにお掛けください」

コトミがその場を仕切り始めた

「今回、シュウさんが性交渉を行っていただくのはこちらののどかになります。

彼女の子宮の中には奥様の卵子を移植してありますので、彼女の膣内で射精をしていただければ問題ありません」

私ももう一つ用意された一人掛けのソファーに座り、コトミの説明を聞く

「シュウさんの場合ですが、精子の運動能力が極めて低い状態となっています。

受精を確実にするために、子宮カテーテルを挿入したうえで性交渉をされたほうがより確実な受精が望めますので、施術開始前にそちらを行います。

カテーテルは伸縮性がありますので、挿入後抜くことはできませんが、腰を浮かして体位の変更は可能です」

テキパキと歯切れのいい言葉で施術前の説明が進んでいく

「今回は避妊用ではない、特殊なコンドームも使用します。

ただ、普通のゴムと一緒なので、そのまま装着してお使いください。

医療用のものなので、1回づつの交換は要りません。

先端は成人男性の目安でおおよそ3回分の精液を貯めれるようになっています。

それ以上も可能ですが、外に漏れてしまう可能性があるので、彼女への射精は3回を目安にしてください」

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