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秘め事は月の輝く夜に、あなたと~後宮華談~

第3章 すれ違う心

 柳尚宮は、ハッと目ざめた。部屋の戸がかすかに音を立てたからだ。後宮の女官たちを監督する監察尚宮という職務柄、夜は熟睡していても、何か異変があればすぐに飛び起きることはできる。
 枕許に人の気配を感じ、柳尚宮は上半身を床の上に起こした。
 灯火も消え果てた薄い闇に眼が慣れるまでは少しの刻を要した。が、蹲る小さな影は、けして殺気や物騒な気配を伝えてはこない。

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