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秘め事は月の輝く夜に、あなたと~後宮華談~

第3章 すれ違う心

 それに、この娘は確かにこの十年で美しく成長した。柳尚宮は、明香が初めて宮廷に入った日を思い出した。
 少しおどおどしたところがあるのは気になったが、大きな黒い瞳に好奇心を浮かべていた十一歳の少女は、いかにも利発そうな顔立ちをしていた。他の同年輩の女官見習いたちのように狡猾に立ち回るすべをいつまで経っても身につけず、他人の失敗まで自分のせいにされても黙って微笑んでいるような少女だった。

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