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秘め事は月の輝く夜に、あなたと~後宮華談~

第1章 人知れず咲く花

 どうせ、大妃の御前に出す茶菓について何か配慮が足りなかったとか、そんな類の文句を言われるのだと覚悟はしていた。何しろ、明香ときたら、一日に一度は必ず何か小さな失敗をやらかして、この尚宮の中では最年長の古株女官に怒られてばかりいる。
 明香が女官見習いとして宮廷に上がったのは、もう十年前のことになる。下級官吏として勤めていた祖父が亡くなった後、伯父の紹介で入宮したのである。

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