テキストサイズ

花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第13章 山茶花~さざんか~ 其の参  

 正確には、おともが口をきいたわけではなく、あの女―仲間の群れから離れて、いつも孤高に一人で佇んでいる白狼のような女、おつなが口をきいてくれたのだ。
 おつなの本業は常磐津の師匠だ。もっとも、他の夜鷹たちに言わせれば、
―どっちが本職が判りゃア、しない。元々、あの女は男が好きなのさ。根っからの、生まれつきの娼婦なんだよ。
 常磐津の師匠だけで十分に生活してゆけるだけの実入りがあるのに、何が愉しくて夜鷹なんぞするのかねえ。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ