近くて甘い
第54章 恩返し
お開きになったパーティー会場。
あんなにもにぎやかだったのが、嘘だったかのように、今この場は静まり返っていた。
そして、下唇を噛みながら、私は、要さんに宥められる隼人のことを見ていた。
「どんな感じですか…?」
いつも通り遅刻してきた酒田さんは、はぁはぁと息を切らせている。
私は、無言で、首を横に振ると、そうかぁ…と酒田さんは残念そうに声を洩らした。
9歳の誕生日会で、好きな人にあんな形で振られるのは、そりゃあ辛いと思う。
しかも、その子の好きな相手が、光瑠さんだなんて、もっと裏切られたような気で一杯なはずだ…。
大きく項垂れる隼人と、隼人を宥める要さんの後ろで、どうしたら良いのかと困った様子で頭を掻く光瑠さんがいる。
せっかく楽しいお誕生日会だったんだけどなぁ…
「隼人くん、すごい落ち込んでるね…」
「うん…」
隼人を心配する私のことを梨子は優しく宥めるようにして肩に手を乗せた。