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近くて甘い

第20章 万能の王子

ゴールデンウィークが過ぎてしばらくした頃、

有川商事はある噂で持ち切りだった。



休暇も仕事という過酷な予定のはずだったのにも関わらず、突然、暦通り休みになったともなれば、誰もがおかしいと思うのが当たり前だ。



「社長に急用が出来たって聞いたけど?」


「うそ?私は副社長に急用が出来たって聞いたよ?」



顔を見合わせるオフィスの職員たち。



気になるのは────



「休めたのは良かったけど…こんなにしわ寄せが後の休暇に…」


「響く…とはね…」



先輩たちの会話に聞き耳を立てていた藍と加奈子は、はぁっとため息をついた。



「副社長…何かあったのかなぁ…」



ぽわんと脳裏に浮かぶ、爽やかな横顔…


もう一ヶ月近くほど顔を見てない…っ




「加奈子、まだそんなこと言ってるの?」


「もぉ…分かってるよ…私なんかが相手にされないって事くらい…」



拗ねたように唇を尖らせた加奈子を見ながら、藍はこの前の要の事を思い出していた。


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