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近くて甘い

第25章 選択の代償

意外な言葉に少し拍子抜けしていると光瑠さんはサイドテーブルに置かれたグラスの縁を指でなぞった。



「かなり腹が立つから認めたくはないがっ…
お前にとって関根は…
初めて好きになった男で…、お前の母が亡くなったあとも、傍にいた。
だから…
今でも、他とは違う特別な存在なんだろう…」


「………っ」


「まぁ…だから…出来ることはないのに変わりはないが、お前があいつに幸せになってほしいと思うのは自己満足ではなくて、きっと本心なんじゃないのか」


穏やかな低い声がじわりじわりと身体に染み込んでいく…


「光瑠さん…」


「…………お前の立場上、自己満足に聞こえてしまうのは仕方がない。
けど…お前は…そんな人間じゃない。」


優しく微笑んだ光瑠さんは、私の頬に手を当てた。


「………それは一番俺が分かっているはずなのにな…。だから…昨日は悪かった…」


「っ…うっ…」


また、にじんでしまった私の涙を光瑠が呆れた様子で見てきた。


「おいっ…何故また泣くっ…」

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