近くて甘い
第35章 交わらない想いと出発
車を見送りながら、吹いた風が要の髪を靡かせた。
どうしていつも肝心なところで社長は逃げるのか。
あなたのそういった行動が僕の決心を揺るがせているのだが…
溜め息をついた要は真希の部屋の窓を見上げた。
まだ開かれていないカーテン。
彼女が負った傷も相当なはず──…
2週間は長い。
どうにかして2人の仲が戻らなければ、
「身を引いた意味が…ないんだが…」
一人でそう呟いた要はポケットに入った袋を取り出した。
かわいらしくラッピングされたクッキーの袋。
とりあえず、社長の留守をしっかりと守らなければ…。
息を吐いた要は袋からクッキーを一枚取り出して、それを頬張っていた。