近くて甘い
第44章 White Prince and Black Prince
愛花が、浩平の衣装の胸元の端を掴みながら、全身の振り絞るようにして想いを言葉にした。
「……やべえ…」
ぽつりと呟いた浩平は、ゆっくりと手を広げると、目の前の愛花の事を強く抱き締めた。
「………すげぇ幸せ…っ」
「うん……っ私も…“すげぇ幸せ”…」
ふふっと笑った愛花は、浩平の身体に腕を回して抱き締め返した。
「…………俺たち…まずいことしたよな…」
「え…?」
「だって…もう文化祭始まってんのに…」
身体を離した二人は、フェンスの向こうの門から来るたくさんの来校者のことを見た。
「あぁ…」
「ごめんっ…俺が無理矢理連れ出したからっ…」
頭を掻く浩平を見ながら、愛花は顔を振った。