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まとまらないお話たち

第11章 11

役に立ちました、と少女は笑って続ける。
「……(こんな…このようなことが……)」
二人の間に確固たる音はない。
鼓膜を震わす声はない。
はたから見れば少女一人が話しているように見えるだろう。
だがカシューの心は感動で震えていた。
互いに向き合って、見つめあって。
相手と〝話せる〟――彼にとってそれは、夢のようなことであったから。
短くても言葉にならなくても、音が出ればいいと魔法の店を渡り歩いたが無駄だった。
なんせ黒き魔女の呪いだ。
もう一度だれかと会話することは、奇蹟に近いだろうと。
自分の声がなければ、たとえ相手と見つめあっても不可能だと思った。
魔法使い同士なら、魔力の波動に自分の意思を乗せて同じ魔法使い同士、会話が成立するのだろうが。
諦めていたことが、今、この少女と会話が、成立している。

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