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まとまらないお話たち

第5章 5


剣と魔法の世界。
ルアド帝国。
明かりの呪文なしでは足元がおぼつかなくなってきた夕刻、北の街道を4人は歩いていた。
吹きつける風が上から下から、コートの隙間をぬって肌をつきさしてくる。
「ひ…、冷えてきたね…」
先頭を行く、レピアがコートの合わせを直す。
その言葉につられたようにロウは隣を歩くメイの肩に腕をまわし、
「だな、…どうだ、寒くないか?」
囁くロウの指先に小さな火が灯る。
吐息を吐くつもりで簡単に火が出せる、火男のロウにかかればすぐに全身が暖まるが、
「……いいえ。別に寒くないわ」
肩にまわった腕をとり、さりげなくメイはロウから離れた。
彼の過剰なスキンシップは、最初に止めておかないと腰まで抱きかねない。
「…………」
4人の中で一番後ろを歩いていた少女は、先のやりとりを冷めた目で見ていた。
「リ~ンちゃん」
不意にぴたりと足を止めたロウが振り返り、前を向いたまま足だけ後ろに歩いてくる。
まさかと思ったが、そのまま片腕を広げ〝抱〟の姿勢になっているので、素早くリンは避けた。
「フザけんな! 誰がてめェなんかと並んで歩くかよっ」
「そー…カリカリすんなって。可愛い顔が台無しだゾ?」
「っ!」
ずいっと顔を寄せると、…みるみるうちにリンの顔が歪み、
「レピア! コイツら置いてくぞ」
彼女は舌打ちし歩幅を速めた。
「え? え? リンさん!」
あっという間に前まで来たリンは、一緒に歩くというよりも明らかに3人を置いていくスピードでずんずんと前を進んでゆく。
「危ないですよっ、その辺は足元が……」
他の2人は大丈夫なんだけど、彼女は口調が乱暴なこともあってついつい話しかけるときは敬語になってしまうレピア。
暗がりで、しかも急ぎ足は危険だと、レピアは追いかけながら声をかけたが、
「こんなン平気だって! それよりも街が見えたから、先、宿とっとくなー!」
マントを翻らせた小柄な背中は、すぐに見えなくなった。
街……?
言われたレピアはその場で足を止め、遠くを見渡す。
確かに、ちら、ちら、と明かりが……。
「明かり? どこにあるんだ?」
「! ひゃああ!!」
隣で低い声がしたかと思ったら、腰の下をすすす…と撫でる感触があり、レピアは体を硬直させた。
「レピア!? どうしたの!?」
悲鳴をききつけたメイが走ってくる。

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